最近、文具やアート用品でよく見る「肌色」という表記が少しずつ変わってきています。
子どもの頃、私の手元にあった色鉛筆やクレヨンにも、「肌色」と書かれているものがたくさんありました。
その時は意味も考えず、「きいろ」や「ちゃいろ」と同じように、この色が「はだいろ」という色なんだと思っていました。
この記事では、「肌色」という言葉はどんな新しい言い方が使われるようになっているのか?どのように変わり始めたのか?をご紹介します。
肌色がなくなった!新たな色名とその由来
肌色として今採用されている新しい色名は3つあります。
- 薄橙(うすだいだい)
- ペールオレンジ
- ベージュ
それぞれの色とその背景について見ていきましょう。
① 薄橙(うすだいだい)
「薄橙」とは、ダイダイ(橙色の柑橘類)に由来する色名です。
ダイダイ特有の鮮やかなオレンジ色を基調にし、そこに少し赤と黄色を加えた鮮明な色合いが特徴です。
名前に「薄」とつくことから、やや控えめなオレンジ色と言えます。
② ペールオレンジ
次に「ペールオレンジ」。
これは、色の感じは「薄橙」とほぼ同じですが、言い方が異なる点がポイント。
オレンジに、英語の「pale(薄い)」がついていて、その名の通り、薄いオレンジ色を指します。
③ ベージュ
最後に「ベージュ」。
フランス語由来のこの言葉は、黄色や茶色がかった淡い色を示し、JIS・日本工業規格では、明るい灰みの赤みを帯びた黄と定義されています。
化粧品ではファンデーションの色に「ライトベージュ」や「ピンクベージュ」と用いられることが多いため馴染みがあります。
これらの色は日常的にも使われ始めており、特に「ベージュ」は非常に親しみやすい色として受け入れられています。肌色の新しい呼び名として、これらの色は徐々に定着しつつあるようです。
なぜ「肌色」という言葉が見直されたのか?
日本ではかつて、人種差別に関する意識がそれほど高くなかったと言われています。
しかし、多民族国家として多様な背景を持つ人々が共存する中で、「肌色」と一括りにする呼称が問題視されるようになりました。
特に教育の現場からこの言葉への抵抗感が生まれ、それが2000年頃に文房具メーカーが色名を見直す動きにつながりました。
子どもの頃から使い慣れた「肌色」という表現ですが、確かに人の肌の色は一色ではありません。
日本では特有の表現として使うことは問題ないかもしれませんが、英語に訳すと「skin color」となり、それが一定の色を指すと誤解を招く可能性があるため、見直しが求められています。
「肌色」とはいつから?その変化の背景
かつて普通に使われていた「肌色」という言葉が、現代では別の表現に置き換えられるようになりました。
特に文具業界での変更が目立ちます。1999年にはぺんてるが、続いて2000年に三菱鉛筆、サクラクレパス、トンボ鉛筆が「肌色」の名称を見直しました。
元々、「肌色」とは日本人の肌を思わせる淡いオレンジ色を指す色名でした。
この表現のルーツは意外にも古く、江戸時代以前から存在しており、「宍色(ししいろ)」と呼ばれていたとされます。「宍」は肉の色を指しており、この言葉が広く使われていたのです。
しかし、徳川綱吉の政策である「生類憐れみの令」の影響で、この言葉が使われなくなり、「肌色」という表現が広まりました。
そして、大正時代に入ると、自由画教育の流行により、絵具や色鉛筆が子どもたちに広く使用されるようになり、「肌色」が一般的な色名として定着しました。
この色名は昭和初期には、子どもたちが人の肌を描く際の標準色として浸透していきました。
まとめ:「肌色」言い換えの現状
「肌色」という言葉の言い換えについてご説明しました。
かつては単一の色が特定の人種を代表するかのように用いられていたこの表現が、時代の変化と共に見直されるようになりました。
色名の変更は、多様性を認め尊重する現代社会の動きを反映しています。
私たちが日常で使う言葉一つ一つが、より多くの人々にとって心地よく、公平であることが求められているのです。このような小さな変更が集まり、社会全体の意識の変化を促しています。